一般歯科医の私が考える口腔外科卒の認識

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一般歯科をメインで臨床をしてきた先生から、口腔外科を経験して一般歯科に移ってきた先生の認識について個人的な意見を書いていきたい。

とても個人的な経験に基づくものなので、一概にそうとは言えないのはもちろん承知ではあるし、決して口腔外科を否定しているわけではない。一般歯科では出来ない治療をスムーズにこなすのは本当にすごいことだと思うし、リスクの高い治療をしているため日々感謝している。

だがしかしその一方で、割合的に優位的に下記の印象を受けることが多いので、一度まとめてみたい。

 

一般歯科と口腔外科との違い

一般歯科と口腔外科の違いは、分野や技術的な違いだけではなく、それ以外のいろいろな面でも大きく異なる。

一般歯科と口腔外科との違いを列挙してみる。

 

一般歯科

 

  • 一般歯科的な内容に従事している。
  • 審美や矯正、自費診療などの比較的金銭的にシビアな治療にも携わる。
  • 治療対象が歯牙や根管など、細かいことが多いため動きも繊細なことが多い。
  • 癌や粘膜疾患、外傷や骨折、全身的な管理などは普段から携わる機会が少ない。
  • 患者さんから他のクリニックや他の先生と比較されたりしやすい。
  • 大きな病院や組織などの後ろ盾は少ないこともあり、サービス的な面(愛想など)も要求されることがあり、患者さんに対して少し下手〜若干権威的な範囲で対応していることが多い。

 

口腔外科

 

  • 口腔外科的な内容に従事している。
  • 審美や矯正、自費診療などの比較的金銭的にシビアな治療にも携わる機会は少ない。
  • 治療対象が粘膜や骨、広範囲での外科が多いため、動きが大きくなりがちである。
  • 癌や粘膜疾患、外傷や骨折、全身的な管理などに携わっている。
  • 企業病院や大学病院に所属していることが多いため、あまり比較されることが少ないように思う。
  • 大きな病院や組織などの後ろ盾があるため、サービス的な面(愛想など)も要求されることが少なく患者さんに対して対等〜若干権威的な範囲で対応していることが多い。

 

口腔外科に行くメリット

一般歯科では出来ないような治療が可能となる。癌や粘膜疾患、外傷や骨折、全身的な管理などに携わることができる。難しい抜歯などに対しても必要なことや注意点なども経験することができるだろう。外科処置に対する経験値は豊富になるだろう。

全身管理も行うため、輸液や点滴の知識も身につけることができるだろう。

また研究を行うという意味では大学院に進んでいく必要があるし、箔をつけるという意味で、〜大学歯科口腔外科教授などをつけるには大学院に進んでいかないといけない。

口腔外科に行くデメリット

口腔外科診療に携わるため、一般歯科に対する知識や経験値はもちろんその分少なくなるだろう。

また一般歯科と口腔外科は全く別物として考える必要があるのだが、その辺りの認識があまり出来ていないように感じる場合も多い。

また一般歯科と違って給与面では一般歯科の方が、特に若い世代で同じ世代で比較したときに、高くなる可能性が高い。

口腔外科は大学院に進んでいるため、あくまで学生(大学院生)のため給与は少ないどころか、大学院の学費を負担しなければいけない。またアルバイトをして稼ぐことになるが、口腔外科所属の歯科医師をバイトで募集している場合の時給は、一般歯科専任の歯科医師のバイトの時給よりも低くなりがちである。

 

口腔外科出身の先生が一般歯科に来る理由

大学院の口腔外科に所属している先生は、基本的に大学病院や企業病院などで臨床を行い、その後研究を行っている場合が多い。

口腔外科に所属している先生の日常は半分臨床、半分研究なのである。

研究に対する予算は限られているし、正直一般歯科の先生よりも給与は安い場合が多いように思う。企業病院に配属され、部長クラスになれれば話は別であるが。

また、口腔外科は医科と併設のことも多く、医科歯科間のストレスも少なからずあるようだ。

さらに、業務内容としてどうしても一般歯科よりも大きめの手術が多くなるため、日帰りでの手術の方ももちろんおられるが、入院患者さんもおられるため病棟の管理や状態管理も大変そうである。

一般歯科で急にオンコールで夜間呼び出しなどはないが、口腔外科の場合当直担当であれば、夜間の呼び出しもあるため、その辺りも大変そうである。

これらの内容で一般歯科よりも給与面でも厳しいとなると、口腔外科で続けることが難しくなってくる先生が少なからずいるようである。

研究が好きとか、口腔外科の領域の手術が好きだとか、教授を狙いたいとかそういうのがあればいいが、そうでもない場合は結構苦しいことも多いようである。

卒業年が同じすなわち臨床経験年数が同じ一般歯科の先生と、口腔外科の先生では生活レベルが違っていることも少なくないようである。

そうなると、一般歯科に移ろうかな、という先生が増えても至極自然の流れと言える。

 

口腔外科出身の先生が一般歯科に来た時に戸惑うこと

口腔外科出身の先生が、一般歯科にきた時に戸惑うことは概ね共通しているように思う。

器具が違う

器具が違うということに戸惑いを覚えることもあるようだ。例えば抜歯においても、一般歯科の抜歯は、抜歯後の補綴のことも考えて繊細に抜歯することも多いため、器具が細かかったりすることも多い。

一般歯科は他の歯科クリニックと比較されることもあるため、どのクリニックもなるべく患者さんに負担を与えないようにしたりホスピタリティを重要視しているクリニックが増えてきている。

それは接遇面だけではなく、治療そのものにおいてもそうであり、マレット(金槌みたいな器具)を使っての抜歯や、振動の多い器具(ストレート)はなるべく一般歯科では使用しない。(使用せざるを得ない場面ではもちろん使用するが、極力使わないしできるだけ他の器具を使用するようにしているはずである)

 

サービス面とか考えないといけなのか

ここは結構大きな違いとして、感じさせれることが多い部分である。

口腔外科の先生はバックに大学病院や企業病院といった強い後ろ盾があるために、権威的になりがちである。強気というか・・・

それに対して、一般歯科は競合も多く強力な後ろ盾が少ないため、ホスピタリティなども意識している場合が多いように思う。

後ろ盾が少ない

大学病院や企業病院とは違って、一般歯科診療は大きな後ろ盾があまりない。

せいぜいそこの院長ぐらいであり、バックが少ない。

そのため、今まで以上に責任感を迫られることが多く、治療以外でのストレスが増えることも多々あるようである。

抜歯ひとつにおいても考え方が違う

抜歯に関しては口腔外科の先生の方が上手いんじゃないの?って言われることもあるが、一概にそうとは限らない。確かにリスクのある抜歯や骨の中のかなり深い部分に埋伏している歯を抜く経験は口腔外科の先生の方が豊富なのは間違いないかもしれない。

何が違うかというと、これは認識している先生は少ないように思うが、一般歯科の抜歯と口腔外科の抜歯に対する考え方は少し違うのである。

一般歯科の先生は(みんながそうとは限らないが)抜歯した後の補綴(歯を補うこと)のことも考えて抜歯している。それに対して、口腔外科の先生はそこまで考えて抜歯しているケースが少ないように思う。

また抜歯の仕方もなるべく患者さんに負担をかけないように工夫して少しでも上手に抜くように意識しているのは一般歯科の先生の方が、その意識が強いように思われる。

 

一般歯科の先生からすると

口腔外科の先生が一般歯科に来るにあたっては、治療においては、今までの口腔外科の経験はもちろん大事だし、尊重すべきものではあるものの、そこに縛られることなく、また少し側面が違うということと、患者さんに対するにあたって少し今までとは違って気をつけないといけないことも多いということを知ってもらいたい。

 

開業するにあたって

口腔外科のままのスタンスで開業することは個人的にはお勧めしない。

どうしても権威的に聞こえてしまう言い方の場合が多いし、一般歯科で注意しないといけないことは口腔外科とはまたかなり違う気がするからである。

サービスなんてしたくない!と思っていても、それは開業するためにはある程度必要なことだと思われる。どうしてもそういうのは受け入れられないのであれば、開業しない方がいいだろう。

どうしても開業するということは、同業者との競争にもなるわけで歯科という特性上、そもそもが行きたい場所ではないために、少しでもその不安や心配を取り除く必要があるし、その点においても口腔外科とは違うため、開業するのであればそれに必要なことを学ぶべきであるが、それは口腔外科よりも一般歯科の方が得意とするところかと思われる。

また口腔外科で得た知識と経験は決して無駄にはならないが、開業するにあたってニーズが少ないということは理解しておく必要があるだろう。

粘膜の疾患や骨折、外傷などで町医者にかかることは虫歯や歯周病に比べると圧倒的に少ないし、もしそういった症例に直面した場合にも、開業した医院で対応することができるようにするためには、とても困難であることは口腔外科の先生が一番わかっていることであろう。

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