保険診療だけで、年商1億円の歯科医院を経営することは規模にもよるが、なかなか難しいということは過去にも書いたとおり。
そのため、年商1億円の歯科医院を経営しようとすると、どうしても自費率をあげていく必要があるが、どうすれば自費率を上げることができのだろうか?
私自身としては、開業当初と現在では若干スタイルが異なっており、開業当初は自費率が60%ほどであったが、現在は35%ほどになっている。
開業当初は保険診療の入金タイミングの問題や、来院患者数の関係上、自費率をできるだけ上げる工夫が必要であった。しかし、来院患者数の増加や規模の拡大とともに自費率は下がりやすくなると考えている。
自費単価によって経営スタイルは変化する
年商1億円に到達するために必要な自費率は経営スタイルによって変わってくる。
コンサルにしっかりと時間をかけて、自費診療の良さをしっかりと理解していただくスタイルなのか、軽くコンサルはするがそこまで時間と労力を割かないか。また自費診療を行いたくなるような雰囲気作りをどれぐらい行なっているかなど。
ひとまず、保険診療を0にしたとして、自費のみでのクリニックの経営スタイルの場合について考えてみよう。どのぐらいの単価で治療ができるかによって考えないといけないことは変わってくる。
年商1億円の歯科医院にするためには1日あたり3.3万点、すなわち33万円あればよい。
1日33万円の患者さんが1人でもいいし、1人11万円の患者さんが3人でもいい。1人3万円の患者さんが11人でも良い。
この辺りはまさにブランドの考え方で、ハイブランドのお店なのか、アクセシブルブランドのお店なのか、カジュアルブランドのお店なのかで変わってくる。
エルメスなのか、フェンディなのか、コーチなのか。
マイバッハなのか、メルセデスなのか、トヨタなのか。
リシャールミルなのか、ロレックスなのか、タグホイヤーなのか。
日常のブランドで考えるとわかりやすいと思うが、クラスが上がれば(単価が上がれば)、その分顧客の数は少なくなる。
またクラスが上がれば上がるほど、プレッシャーも上がるし、求められるもののクオリティも必然的に上がっていくだろうから、それに応えるだけの知識、技術、経験は必要になるだろう。
フルマウス治療のような高単価のものをメインでされている医院なのか、矯正推しの医院なのか、ホワイトニングや自費クリーニングのみのクリニックなのかでも、やり方は変わってくるだろう。
高額な自費診療を提供していくために必要なこと
保険診療があるにも関わらず、自費診療を扱っていく上で注意すべきことはなんだろうか?
保険診療は比較的安価なため、特にこちらから提示しなくても希望される方は多いだろう。しかし高額な自費診療を提供していくためには、何が必要になるだろうか。
必ずコンサルする
一般的な物販に置き換えて考えてみてほしい。
例えば、100円ショップで取り扱いされているものは、最低限の素材で、なるべく安く必要なニーズに応えることのできる商品が並んでいる。まさに保険診療で行うような銀歯や詰め物がその類であろう。利益率は低いが、価格的ハードルは低いため購入しやすい。
その場合、販売員側が特に何もしなくても、お客さんが必要あるいは欲しいと思った物があれば、ある程度は勝手に売れていくことだろう。まさに保険診療である。
その反対に、セレクトショップで販売されているものの中にある、他と比べてクオリティは高いが、金額的にも0が何桁か違う商品は、もしそれに目を向けたお客さんがいたら、販売員の方が熱心にそのものの良さや、素晴らしさを説明してくれるだろう。
2:6:2の法則
2:6:2の法則というのをご存知だろうか?
『2:6:2の法則』とは、“どのような組織・集団も、人材の構成比率は、優秀な働きを見せる人が2割、普通の働きをする人が6割、貢献度の低い人が2割となる”という理論を指す。 この考え方の発端は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートの研究にある。
歯科診療においての2:6:2の法則として言い換えれば
- 2割の人は、患者さん側から自費診療を希望される
- 6割の人は、こちらからの提案の仕方で保険診療にも、自費診療にもなり得る
- 2割の人は、保険診療のみ
ということである。
すなわち、自費率を高めるには6割の患者さんの中からどれだけの方に、自費診療の良さを理解してもらい、そちらに進んでもらうかが鍵となる。
もちろん、どの患者さんが2割なのか6割なのかはわからない。そのために、私はどうしても自費診療をしないであろう方以外には100%、コンサルを行うようにしている。
年商1億円の歯科医院の経営のためにはどのぐらいの自費率がいいのか?
自費率100%つまり、自費専門の歯科医院がいいのか、自費診療と保険診療のどのぐらいの割合での医院経営がいいのか?
結論としては、自費率は高ければ高い方がいいとは思うが自費率100%の歯科医院経営は個人的にはオススメしない。正しい言い方としては、保険診療は行なっていた方がいいということである。
自費のみで年商1億円の歯科医院を経営することは、やはりなかなかハードルが高いのではないか?と個人的に考えているからというのもあるが。
まずは、ちゃんとしたクオリティを保った状態で保険診療を行い、収入のベースを作る。その上で、自費診療に移行してくれる患者さんを増やしていくスタイルがいいのではいだろうか?
保険診療を辞めてしまうのはオススメしない
保険診療を辞めて自費診療のみにすることは、個人的にオススメはしない。
なぜなら、個人的な意見としてではあるが、自費診療には波がある。収入が高い月もあれば、そうでもない月もある。保険診療はその点安定した収入となりやすい。
また保険診療を行なっていることで、安価なラインの取り扱いがあるということで、窓口が広がる。
ラルフローレンも、ラルフローレンとポロがあるのと同じである。同じクリニック内で2つのラインがあるイメージである。
余談だが、クリニックの玄関を通って受付を過ぎたあたりから、通路が2つに分かれていて、片側は自費診療専用、もう片方が保険診療専用といった設計にしているクリニックを見たことがあるが、そこまでしなくてもいいようにも思うが。
また保険診療を行なって窓口を拡げた方がいい理由としたら、自費診療はハイブランドと違って毎シーズン新作が出るわけではない。
一度治療が終了すると後は検診でしか収入がなくなってしまう。せっかくの顧客になってくれた患者さんも毎シーズン新しい自費診療をしてくれることはないのだ。(毎シーズン自費診療をしているということは、その度治療のやり直しになったり、どこかが悪くなっているということなので、それは良くない)
まして、自費診療のハイクオリティの治療であるほど、長持ちする傾向にあるし、逆に保険診療は際治療の割合が多いので、その点でも保険診療はやめない方がいいだろう。
コメント